クリニックブログ

カテゴリ「甲状腺について」

カテゴリ「甲状腺について」

当院のブログをお読み頂きありがとうございます。


早いもので2025年も3月になっておりました。 行く1月、逃げる2月、去る3月とはよく言ったものだなと感じます。


先日は院長と当院の糖尿病療養指導の資格を有するスタッフによる糖尿病教室も盛況に行うことができました。お時間を割いて参加くださった皆様に感謝申し上げます。

次回も開催日時が決まりましたらアナウンスさせて頂きます。是非またご参加ください。


さて、年度末のこの時期は別れと出会いの時期でもありますね。

慣れた環境、慣れた生活から新しい環境、慣れない生活へと何かと身体や精神にはストレスとなることも多いかと思います。


私の専門分野は消化器内科ですので、過敏性腸症候群と思われる症状が悪化しやすい時期でもあります。また、院長の専門分野では引っ越しなどで通院先探しに困られる方もいらっしゃるかと思います。継続的な治療が必要な糖尿病、甲状腺疾患は専門医がまだまだ少ない分野です。みよし、東郷、刈谷、豊田付近の方にはちょうどそのまんなかあたりに当院はございます。


何か体調面でお困りなこと、専門的なご質問からちょっとした悩みなどお気軽にお尋ね頂けばと思います。


今後もかまたにクリニックをどうぞ宜しくお願い申し上げます。

前回の続きです。

 

妊娠を希望される方、妊娠中の方と甲状腺疾患についてです。

 

このことを私が初めて知り、興味深いと思ったきっかけは、まだ豊田厚生病院で勤務を始めたばかりで、内分泌代謝内科に入りたての頃に初めて参加した日本甲状腺学会の学術集会での講演でした。

 

そこでは、そもそも甲状腺疾患が妊娠可能年齢の女性に多いこと、妊娠の成立や維持、さらには胎児の発育に甲状腺ホルモンが重要な役割を持つことなどが発表され、当時学びはじめだった自分では完全には理解できなかったものの、その重要性や意義深さに衝撃を受けたことを今でもはっきりと覚えています。

 

その後大学関連病院や、甲状腺疾患治療専門病院で数多くの妊娠に関連する患者様を診察させていただいくなかで、甲状腺ホルモン治療を適正に行うことで今まで長く不妊症に悩んでいた方が無事妊娠され出産されたケース、今まで妊娠には至るが流産を繰り返されてきた方がやはり甲状腺ホルモン治療を適正に行うことで無事出産されたケースなどを何例も経験しました。

 

具体的には、甲状腺機能低下症では通常の生活を問題なく送るには問題のないTSH(脳から甲状腺を刺激するホルモン)の値(いわゆる基準値内、正常値内)であっても、妊娠を希望される方、妊娠中の方ではより厳格に管理を行い、一言でいえば「妊娠のためにより適した甲状腺の環境」を作り、無事出産を迎えようという治療を行います。特殊な検査は必要なく、採血でTSH(必要に応じてFT4,3値もみながら)を継続的に測定し、必要に応じて甲状腺ホルモン剤を1日1回飲んでいただくという治療です。したがって大きな費用の負担や副作用の心配もなく、妊娠中の方にも安心して行っていただけます。

 

バセドウ病に関しては、妊娠を希望される方、妊娠中の方には治療を始める段階でのお薬の選択から注意が必要です。それは、最もバセドウ病で使用される内服薬の副作用に、非常に稀な頻度ではありますが妊娠初期に内服していた場合胎児に奇形が出現することがる、というものがあるからです。したがって妊娠初期に飲んでいても安全なお薬を選択します。そのうえで、甲状腺機能低下症の方と同じように、「妊娠のためにより良い甲状腺の環境」を作れるようにより細やかに厳密に内服量をコントロールしていきます。

 

無痛性甲状腺炎は本来自然に改善し、投薬は不要なものですが、妊娠を希望される方に発症した場合、途中で機能が低下した時期にTSHが上昇するタイミングを見逃さず、速やかに甲状腺ホルモン治療を行います。また無痛性甲状腺炎が最も起こりやすい時期が出産後です。この時期は授乳中であることが多く、バセドウ病と誤診し、無用な投薬を行うことがないよう、より慎重で正確な診断と治療が求められます。

 

甲状腺ホルモンは人それぞれ、日々刻々変化します。妊娠を希望される方、妊娠中の方が無事出産を迎えられるよう、その一助になれたらという思いで診療にあたっています。その思いのもと、可能な限りわかりやすく、納得いくまで丁寧にご説明いたしますので、お気軽にご相談いただけたらと思います。

 

この分野は非常に奥が深く、まだまだ書ききれない内容も多々ありますが、文章がまた長くなってきたので今回はここまでとします。

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